かっぱのあしあと

四つの時を超えて 

この「旧エンバーソン住宅」が建てられた明治37年は日露戦争開戦の年。
日本は日清戦争から続く激動の時代の中にありました。
そうして明治・大正・昭和・平成と四つの時代を生き抜いてきました。
日本の開国とそれに伴う宣教活動のため、はるばる太平洋の
向こうのカナダからやってきたエンバーソン氏は何を見たのでしょう。

エンバーソン氏は若くして亡くなられましたが、その後代わる代わる
この家に住んだ宣教師や牧師は、富国強兵にまい進する日本の中で
信仰と平和を祈っていたのでしょうか。
さすがに第一次世界大戦後には海外からの宣教師が引き上げ、
日本人の信徒たちがこの家を信仰と祈りの拠点としていました。

天皇を神の子として崇めた戦前には、キリスト教はどのように
扱われていたのか、また信徒たちはどう暮らしていたのでしょう。
宗教が人間にもたらすものにはプラスとマイナスがあるのですが、
心の拠り所にもなる一方で戦争や憎しみの一因にもされます。

日本人は「無宗教」といわれて久しくなります。
信仰とマインドコントロールは紙一重です。
でも何かを信じて、何かに心を託さないと生きてゆけないような
孤独と疎外感に満ちた現代社会に、宗教は何かをもたらすのでしょうか。
こんな現代を、エンバーソン氏はどのように思うでしょうか。


2014103101.jpg
2014/10/25 10:29 OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO
24mm相当 絞り優先AE(f/2.8 1/6400秒 -2.3EV) WB:6000K ISO:200 Vintage


2014103102.jpg
2014/10/25 10:14 OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO
24mm相当 絞り優先AE(f/2.8 1/80秒 +0.3EV) WB:5700K ISO:250 Vintage

この窓にはめられたガラスも当時のもので、現代のガラスのように平滑度は高くありません。
そのため向こう側の景色が歪んで、まるでステンドグラスのようにも見えます。
また比較的厚いため、この窓自体は重く上げ下げが大変です。
そこで、上にわずかに見える紐で窓枠を引っ張り、中空になっている
真ん中の柱の中を通して錘で引っ張っているそうです。
意外なアイデアに感心した次第です。


2014103103.jpg
2014/10/25 10:20 OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO
30mm相当 絞り優先AE(f/2.8 1/80秒 -1.7EV) WB:4500K ISO:400 Vintage

この壁は、主人であるエンバーソン氏と使用人たちを仕切っています。
向こう側の食堂へ食事を渡すための「配膳窓」で、扉も付いています。
左に少しだけ見えるのは使用人専用の階段で、前回の記事に載せた
主人用の階段とは別に用意され、使用人はもっぱらこちらを使います。

しかも、壁のこちら側はなんと床が10センチほど低くなっているのです。
解説を聞かせてくださった方の話では、やはり主人と使用人の
身分をはっきりとさせるための処置ではないかということです。
使用人たちは、手前側にかつてあった離れに住んでいました。
この辺りも明治時代の名残なのでしょうか。


2014103104.jpg
2014/10/25 10:25 OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO
24mm相当 絞り優先AE(f/2.8 1/60秒 -2.0EV) WB:4800K ISO:320 Vintage

客間に置かれた旧いオルガンも110年前からこの家の住人です(推定)。
よく見ると「YAMAHA ORGAN」と書かれている日本製です。
じつはこれ、カナダから逆輸入されたもので、太平洋を往復したんです。
このオルガンを囲みながら賛美歌を歌っていたのでしょうか。
今は動きませんが、日本の楽器が世界で活躍していたのが嬉しいですね。


2014103105.jpg
2014/10/25 10:16 OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO
24mm相当 絞り優先AE(f/2.8 1/800秒 -1.0EV) WB:5000K ISO:200 Vintage


旧い日本家屋には、日本に建ち続ける様々な工夫が見られます。
床下などの風通しとか、保温・保冷効果のある土壁とか、
太い柱や梁とか、多彩な用途に役立つ軒下などなど。
でもこういった洋館が日本の風土で永年に渡り生き続けるのは
大変なことなのではないかと想像します。

海沿いに建つ旧マッケンジー住宅でも、金具に錆びにくい真鍮を多用するなど
潮風や多雨に備えた様々な対策が施されているおかげで美しい姿を保っています。
国内の旧い日本家屋でも、保存するのに大変な苦労があると聞きます。
できるだけ永く保たれて、五つ目の時代も超えて建つことを祈ります。



関連記事
スポンサーサイト

[edit]

はんべさん

「明治・大正・昭和・平成と四つの時代を生き抜いてきました」
その言葉の重み 私の心に残照します


客間に置かれた旧いオルガンも110年前からこの家の住人です(推定)。

感動です
鍵盤は象牙かと思われます
現在は 象牙は輸入禁止で鍵盤使用は出来ません
当然輸入禁止は賛成です
しかしながら 象牙の鍵盤は それは手触りがよく  弾きやすいです
YAMAHAのお話し 嬉しく 拝聴させて頂きました
小さいながら グランドである 私のピアノもYAMAHAです
お写真 拝見させて頂き 練習をしたくなりました
有難う御座います

香月 りら #sSHoJftA | URL | 2014/10/31 20:38 * edit *

Re: はんべさん

> その言葉の重み 私の心に残照します
私自身、昭和と平成の境界に出会いましたが、「時代」の変遷というのは感慨深いものです。
昭和は遠くなりにけりと言いますが、平成も四半世紀を超えました。
平成って時代は後にどんな風に語られるのでしょうね。

> YAMAHAのお話し 嬉しく 拝聴させて頂きました
ヤマハが創業したのは明治30年ごろですから、まだオルガンを作り始めたばかりの頃でしょうか。
すでに世界的な人気ブランドになっていたそうで、なかなか素敵なデザインですね。
象牙などの動物素材は、今では毛皮でも避けられるようになってきました。
しかし今でも中国による産後の乱獲など後を絶ちません。
人間も動物もシアワセな世界が来るといいですね。


はんべ #- | URL | 2014/10/31 23:25 * edit *
Secret

トラックバックURL
→http://kappahanbesuki.blog94.fc2.com/tb.php/940-75de1181
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)