かっぱのあしあと

懐古と言う名の壁 

インプレスのWebサイト「Car WATCH」上に面白い記事がありました。
もの作り対談 トヨタ「86」開発者 多田哲哉& ニコン「Df」開発者 後藤哲朗
と称する対談で、なかなか内容の濃いものでした。

「86(ハチロク)」はかつて若者を中心に大人気となった、
カローラをベースに作られた軽量コンパクトな後輪駆動スポーツカー「AE86」を、
今日の技術をつぎ込んでスバルと共同開発し蘇らせたスポーツクーペです。
「AE86」は今の軽自動車並みの軽いボディだからこそ非力なエンジンでも
思いのまま操れる楽しさを多くの人にもたらしました。

今では安全性などの問題からそこまで軽くはできない代わりに、
徹底した低重心化などを図りスバルの水平対向エンジンを搭載。
さらに「AE86」同様にユーザーの「いじれる余地」を残すことで
所有し、改造し、その愛着ある愛車を転がす楽しみを思い起こさせました。

一方でニコンDfは中身こそ最新のセンサーなどを使いながらも
たくさんのダイヤルを回し、じっくりと被写体に対峙し
一回のシャッターに心を込めていた時代を想起させます。
そういった意味では大変共通項の多い両者を開発した人自身が
対話するのですから、なかなか興味深い記事です。

個人的に気になった部分を列記してみます。
・多田氏はキヤノンのほうがスペックは上じゃないかと後藤氏に言うと、
 実際に店頭で触ってみればどちらが良いか分かるはずだと伝えます。
 結局多田氏はニコンD90を購入しました。

・86は先日のマイナーチェンジでサスペンションのボルトを変更。
 これだけで乗り味が変わるため、既存のユーザーにもボルトのみを提供。
 注文が殺到して供給が追いつかない状況らしい。

・86は電子デバイスで誰でも上手く乗れるクルマを目指したが
 下手くそが乗るとまともに走らず、練習すると楽しくなる方針へ変更。
 豊田章男社長自らハンドルを握り納得の行くまで作りこんだ。

・Dfは面倒な操作をユーザーに覚えてもらいながら、ユーザーが
 カメラとともに育つことをコンセプトにしていた。

・カメラのデジタル化はフィルムを巻き上げたり戻したりの操作が不要になった。
 フィルムカメラ時代はその力加減がカメラメーカーの技術を知る手がかりになっていた。
 クルマもエンジンの始動時のチョークやアクセルの加減が必要でなくなり、
 アクセルも電子ボリュームのような構造にせざるを得なかった。

・スポーツカーは趣味性が高く、必ずしも必須のものではない。
 乗降性や使い勝手の癖も、ある意味ではスポーツカーならではのもの。
 しかしドアハンドルだけは使いやすいクラウンのものを流用している。

・ニコンが重視しているのは信頼性。プロ機材からスタートしたカメラメーカーなので
 何より信頼性を大切にしているが、コストなどとの按配も必要になってきた。
 電子化された最近のカメラのアンチテーゼとして、思い切ったダイヤル操作を取り入れた。

・クルマ離れが深刻化していた2007年にスポーツカー造りを本格的に始動。
 クルマ好きの王道であるスポーツカーのなかったトヨタが、
 当時営業部門の役員だった豊田章男氏の後押しでユーザーとともに育つクルマを目指した。

・ニコンがジウジアーロ氏と組むきっかけになったのが三本和彦氏。
 Dfはダイヤルを多用したもののその手ごたえと音はライカに敵わない。
 使い込むことで変わるのか、今だ原因は掴めない。

・通常共有部品を多用する傾向の中で、86は共有部品を減らし
 ルームミラーもコストをかけて専用のデザインで作っている。
 カメラは部品が多いほど良い感触を得られると言うが、
 昨今のカメラはネジでも共通のものを使うことが増えている。

・ニコンは社員自身にも写真を撮る楽しみを求めている。
 86を作って感じたのは常に常識に対する疑問を忘れないこと。

2014062101.jpg
2014/6/16 13:25 OLYMPUS E-M1 + ZUIKO 50-200mm F2.8-3.5 SWD
246mm相当 絞り優先AE(f/3.5 1/2000秒 -1.3EV) WB:4500K ISO:200 ToyPhotoII

 
2014062102.jpg
2014/6/16 12:00 OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO
80mm相当 絞り優先AE(f/2.8 1/200秒 -1.3EV) WB:4500K ISO:200 Natural


2014062103.jpg
2014/6/16 11:48 OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO
48mm相当 絞り優先AE(f/2.8 1/80秒 -1.3EV) WB:3500K ISO:800 Natural


2014062104.jpg
2014/6/16 13:57 OLYMPUS E-M1 + ZUIKO 50-200mm F2.8-3.5 SWD
216mm相当 絞り優先AE(f/3.3 1/4000秒 +0.0EV) WB:4200K ISO:200 FantasicFocus


2014062105.jpg
2014/6/16 11:11 OLYMPUS E-M1 + ZUIKO 50-200mm F2.8-3.5 SWD
316mm相当 絞り優先AE(f/3.4 1/1600秒 -1.3EV) WB:6000K ISO:200 ToyPhoto


なぜか、ペンタックスやオリンパスのカメラを愛用する方が共通することを言います。
「作り手の気持ちが伝わるカメラがすきなんだよね」
私たちは日頃様々なモノに触れ、使ったり消費したりしています。
「モノづくり」と簡単に言ってしまうと実も蓋もないほどの
情熱が込められたモノを手にしていることだってあるでしょう。

とはいってもコストや時間の制約の中で妥協も必要になってきます。
幸いにして、私たちはプロと同じ機材を比較的手頃に入手して使える環境にあります。
これはスチルカメラといった限られた世界だからこそでもあるし、
日本の優れた大量生産技術と多くの熟練工のスキルで成しえた偉業とも言えるでしょう。


ところで86もDfも「懐古調」という括りで語ることができます。
かつての名機を今日の技術で蘇らせ、シニアにも懐かしく
若者には新しい刺激や感動をもたらしている点で共通しています。
しかし私が気になるのは懐古や復古はそれ自体が新しいモノを生み出さないこと。

音楽や映画をはじめ、私たちの身の回りにはいつの間にか懐かしいモノが溢れています。
長い不景気の中で、冒険や実験が許されない風潮が蔓延しています。
ここから新しいモノが生み出され、それがまた復古して繰り返されるのか。
「温故知新:古きを温ねて新しきを知る」とは古いことを学んで新しい価値を見出すとされています。
大切なのは古いことを学ぶだけではダメなこと。
常に疑問を持ち、新しいことを生み出す情熱が人間には必要です。

86やDfが評価される一方で、10年後にはどんなクルマやカメラが
私たちを楽しませてくれるのかと期待することも忘れたくはないですね。

週末でつい長文になってしまいました^^;
休みは何処へ行こうか。
もう少しだけ時間にゆとりがあるといいのですが。

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はんべさん

おはようございます

一枚目のお写真
花菖蒲はこのお写真のように 花びらが綺麗な花を探すこと自体
他の花から比べると難しいです
その花を最も美しい状態で撮影してあげたいと思う心が伝わって
くるお写真です
色彩の青 その青の個性にも惹かれます

二枚目のお写真
幾何学模様を描いている枝が覆いかぶさるがごとくある地
そこに咲く 一輪の花に目を留めています
構図の素晴らしさに 溜息が出る程です

四枚目のお写真
被写界深度の浅いお写真
ミクロの世界のフォーカス
幻想的な暈け感を造っています

今日もはんべさんならではのお写真
拝見させて頂き 幸いです

香月 りら #sSHoJftA | URL | 2014/06/22 05:09 * edit *

Re: はんべさん

> 色彩の青 その青の個性にも惹かれます
花菖蒲園はたくさんの株が密集しているので、
一輪だけをフィーチャーするのがかえって難しかったりします。
一輪写真を狙って状態のいい花を探してようやく見つけたといったところです。
紫はデジカメが苦手にするので青い花を狙ってみました。

> 幾何学模様を描いている枝が覆いかぶさるがごとくある地
> そこに咲く 一輪の花に目を留めています
公開されている大きな庄屋の中を歩いていて、中庭で見つけたツツジです。
もう一歩前に出たかったけど、傷んだ縁側が私の体重に
耐えられそうになかったので身を乗り出して撮りました。

> 幻想的な暈け感を造っています
前暈けはいろいろな演出に使えるので便利ですね。
画面全体をソフトにすることもできるし、
画面の一部に視点を誘導することも簡単です。
三脚でカメラを固定していては撮れない代わりに
ファインダーの中の変化が楽しいです。

はんべ #- | URL | 2014/06/22 08:24 * edit *
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