かっぱのあしあと

富士桜自然墓地公園の櫻 

先日NHK(Eテレ)である番組を見て感銘を受けました。
4月27日(日)午前9時放送の「日曜美術館」です。
明治・大正・昭和にかけて活躍し、日本画に新たな息吹をもたらした
「奥村土牛(とぎゅう)」(1889-1990)の特集でした。

土牛が1972年に83歳で描いた代表作「醍醐」が主な題材です。
東京生まれの土牛は16歳で画塾に入ると、後に師匠となる
小林古径(こけい)に出逢い、当初は古径の作風を学びます。
それは徹底した写生と流麗な線画です。

「ものをよく見て描く」(古径)
ものを見るとはどういうことなのか、
悩んだ土牛は疎開先(長野県南佐久郡)で写生に明け暮れます。
見たままを描くのではなく、対象の内面に入り込んだ写生を
心がけた土牛は次第に観察眼を磨いてゆきます。

しかしあるきっかけから画風が一転します。
師と慕っていた古径が死去し、それまでの輪郭線が消えるのです。
古径の画風と自らの描きたいものとの葛藤が新たな作風を生み出します。

「無難なことをやっていては、明日という日は訪れてこない」

最高傑作とも謳われる「醍醐」(どんな作品かは検索してください)に
描かれた桜には一切輪郭はなく、また陰も見られません。
しかし作品は明るい光に満ちていて、その生命感が見事に伝わります。

その描き方というのは、薄い絵の具を重ねて主な絵を描き、
さらにその上から気づかないほどごく薄い絵の具を塗り重ねていきます。
それを100回以上繰り返し、まるでソフトフィルターのような
美しいヴェールを日本画の中で再現して見せたのです。

そしてもうひとつ、独特な構図が大変印象的です。
樹齢150年を超える大木なのに、そこにあるのは太い幹と
僅かな花と枝だけで、全体ではなくごく一部のみを描いています。
しかしこの「狭い構図」は画面の外側を見る者に想像させて
一層櫻の大きさを大きく感じさせることに成功しています。

101歳で他界するまで筆を持ち、描くことへの情熱を燃やし続けます。
「芸術に完成は有り得ない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである」


2014050101.jpg
2014/4/17 10:49 Nikon D600 + AF-S 70-200mm F4 VR
200mm 絞り優先AE(f/4 1/800秒 +0.0EV) WB:4500K ISO:200


2014050102.jpg
2014/4/17 10:39 Nikon D600 + AF-S 70-200mm F4 VR
200mm 絞り優先AE(f/4 1/1000秒 +0.0EV) WB:4500K ISO:200


2014050103.jpg
2014/4/17 11:23 Nikon D600 + AF-S 70-200mm F4 VR
200mm 絞り優先AE(f/4 1/250秒 +0.0EV) WB:4500K ISO:200


2014050104.jpg
2014/4/17 10:54 Nikon D600 + AF-S 70-200mm F4 VR
135mm 絞り優先AE(f/4 1/320秒 -0.7EV) WB:4500K ISO:200


2014050105.jpg
2014/4/17 10:27 Nikon D600 + AF-S 70-200mm F4 VR
200mm 絞り優先AE(f/4 1/500秒 +0.0EV) WB:4500K ISO:200


前回ご紹介した東富士の「冨士霊園」に対して、西富士にある
「富士桜自然墓地公園」も見事な櫻が楽しめる人気の場所です。
とりわけ富士山と一緒に櫻や紅葉が撮れるため富士山カメラマンにも
知られますが、この日は霞が強く富士山は撮れませんでした。

ここではまだ咲き残る梅と櫻の競演が楽しめました。
また幹に直接花を付ける「胴吹き」は、どこか可憐で健気さに惹かれます。
百日紅(サルスベリ)が成長するにつれて飲み込んだ名札は
受験生に「スベリ止め」のご利益がありそうですね。


常々私は写真と絵画は違うものだと考えていました。
写真はそこにあるもの全てが写るので、狙ったものにピントを合わせ
それ以外のものを大きく暈かすことで見る人に描きたかったものを伝えます。
一方絵画は描いたものだけしかそこにはなく、見せようとしないものを
暈かすなどの技法を使うことはないと思っていました。

しかし土牛の「輪郭のない桜」はまさに暈かして輪郭を消す写真と通じます。
百回以上も絵の具を塗り重ねて立体感を作り出したり、
構図を利用して見る者に想像を掻き立てるあたりも同様です。
何日とか何ヶ月もかけて一枚の絵を描くのと、数百分の一秒という
瞬間に全てを描ききる写真とはどこまで通じ、どこまで違うのか。
そんなことを考えながら写真を撮るのも面白くなりそうです。


この番組ですが、来る5月4日(日)午後8時からEテレで再放送されます。
興味のある方は、是非録画して繰り返しご覧ください。
私は既に十回以上も見てしまいました^^;

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[edit]

こんばんは

日曜美術館 私も見ました。毎週楽しみにしています。
大ファンのニコンの大先生が出てらっしゃいましたので
大いに楽しかったです^^

放送の中で井浦さんが構図に関して
「ズームで・・・」というお話が出た時に、大先生は
「標準で・・・」と仰ったのが印象的でした。

ここは気になります!
今度お会い出来たらお聞きしてみたいです。

もちろん鳴門の渦潮も撮りた~いです^^

手打ちそば蕎友館井出明久 #- | URL | 2014/05/01 19:21 * edit *

Re: こんばんは

> 大ファンのニコンの大先生が出てらっしゃいましたので
私は初めて見ましたが、最近日本画に興味があるので
一応録画予約していたものです。
しかし実際に見るにつれて惹きこまれてしまいました。

> 「ズームで・・・」というお話が出た時に、大先生は
> 「標準で・・・」と仰ったのが印象的でした。
画角を説明する際に、井浦さんが「広角」に対する例えとして
「ズーム」という表現をされたのだと思われます。
ただズームは画角が連続変化するものなので、
広角に対する引き合いには標準レンズとか望遠レンズといった
喩えの方が適切だろうと言い換えたのかもしれません。

ちなみに三好さんの脇にあったカメラのレンズは58mm f1.4ですから
いわゆる標準レンズの類ですね(といっても20万円近い代物です)。
標準レンズは見たままに写ると言われていますが、
それだけに使いこなしは大変難しいし挑戦しがいがあるものです。

はんべ #- | URL | 2014/05/01 21:29 * edit *
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