かっぱのあしあと

樹海を述懐 

時に平安時代の西暦864年(貞観6年)富士山麓長尾山で
巨大な亀裂から大量の溶岩が噴出する、
有史以来最大級の噴火が起きました。
世に言う「貞観大噴火」と呼ばれ、この時の溶岩流が
「せのうみ」を分断し今日の西湖と精進湖に分けました。

その溶岩流は一帯の森林を焼き尽くし3000ヘクタールに
及ぶ一大溶岩台地(青木ヶ原溶岩)を形成しました。
溶岩が冷えて固まった土地にはまずコケや藻類が着装します。
それらは多孔性の溶岩が浸透させてしまう雨水を保持します。
やがてそれらを栄養にして背の低い雑草類が生育します。

草原状態が生育と枯れるのを繰り返しながら
主にツガやヒノキなどの常緑針葉樹林が覆う「樹海」ができます。
「紅葉台」などの高台から青木ヶ原を眺めると、
一帯の樹木の高さが一定で、まるで森林の海のようです。
「樹海」と呼ばれる由来がここにあります。

90%以上が常緑樹であることから「青木ヶ原」と名付けられたそうです。
人が生活する地域の近くにこれほどの樹海があるのは大変珍しく、
富士山が織り成す気象も相まって特異な自然を形成しています。

2012051401.jpg

青木ヶ原樹海といえば、一度入ったら出られないなどと言われます。
確かに樹林の奥深く入ると、周りを見渡しても同じ景色に見えること、
更に鬱蒼と茂る木々に遮られて太陽が見えず方向感覚を失ってしまいます。

また方位磁針が利かなくなるとも言われます。
溶岩でできた大地は磁気を帯びており、方位磁針を岩に近づけると
針が回ってしまって方位が分からなくなります。
しかしよほど厚い溶岩に近づけない限り、実際には機能します。

最近ではGPSも使えないという話もありますが、
これも森林の中に入り込むと木々がGPSの電波を遮るためで
樹海独特の単純な自然現象といえます。
青木ヶ原樹海は激しい溶岩流がそのまま固まったため
平らな地面がほとんどなく、視界を遮るため迷いやすい一面もあります。

溶岩の大地ができたのは1200年ほど前で、森林としては若いです。
まだ溶岩の上にはほとんど土壌が形成されていません。
そのため芽吹いた木は地中深く根を伸ばすことができません。
溶岩の上をほぼ水平に根を伸ばし、お互いに絡ませて
倒れないように必至でしがみついているように見えます。

当然倒れやすいため、高く伸びた樹木は根を残して倒れます。
倒れた朽木はコケやバクテリアに分解され養分になります。
残った根にはコケが自生し、落ちた種が芽吹きます。
その芽が育つ頃には元あった根は腐って消失するため
地面から浮き上がっているように根が伸びています(浮き根)。

朽木や落ち葉が腐敗しては次第に土壌に変化していくでしょう。
でも1200年ほど経ってもまだ土壌はわずか数十センチ程度しかありません。
まだ当分の間は溶岩台地の上で倒木と芽吹きを繰り返します。

ところで樹海にいると気が付くことがあります。
それは一般の森林で目にする虫がほとんど居ないことです。
時には蝉の声や飛び回る小さな羽虫が居る事はありますが。
一般の森林とは比べ物にならないほど少ないのです。

その主な理由は「土と水がない」ためです。
蝉やカブトムシなどの幼虫は土の中で育ちます。
またハエやトンボの幼虫は池などで育ちます。
しかし樹海には土がないため地中には入れません。
雨水は溜まることなく浸み込んでしまうので
水溜りや池ができないので虫が成育できないのです。

ところがこの樹海で数多く見かける動物があります。
それは鹿です。
昼間見かけることは滅多にありませんが、
日の出の撮影で深夜樹海の中を走っていると
道路の脇に沢山の鹿を見ることができます。
たまに尻尾の長い影が動くのは恐らく狸でしょう。
彼らは樹皮や木の実を食べるので樹海でも生活できます。

この日樹海への入り口で見た光景です。

2012051402.jpg

未開封のトマトペーストの業務用の大きな缶が
数多くそのまま放置されています。
この周りには不要になったと思われるMDプレーヤーや
ベビーカーの残骸にビニール袋など沢山のゴミが散乱していました。
持ち帰って処分したいところですが、あまりにも量が多く
ごく一部のペットボトルやビニール紐などしか持参できませんでした。

目に付きにくく停車するクルマもほとんどない場所なので
ゴミを捨てるのにはかえって好都合なのでしょう。
深夜にもなれば通るクルマもなく真っ暗です。
いくら捨てても身元が分からないので取り締まりもできません。
時々産廃回収活動が行われるのですが全く追いつけません。

「富士山」「世界遺産」と聞くと必ずゴミが多いから
なれないんだという話を耳にします。
ゴミが多いから認定されないわけではないのですが、
なぜゴミが多いのかは人が居るからです。
本気で世界遺産にしたければ、完全に立ち入り禁止にするしかないでしょう。
でもそれはあまりにも非現実的なので世界遺産など諦めることです。

醜く荒らされてゆく富士山を見ながら人間の業の浅ましさを
知るためにはネガティブな世界遺産と言うのも悪くはないかな。
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時に平安時代の西暦864年(貞観6年)富士山麓長尾山で巨大な亀裂から大量の溶岩が噴出する、有史以来最大級の噴火が起きました。世に言う「貞観大噴火」と呼ばれ、この時の溶岩流が「せのうみ」を分断し今日の西湖と精進湖に分けました。その溶岩流は一帯の森林を焼き尽く...

まとめwoネタ速neo | 2012/05/15 00:20